「あなたの宝物を持ってきてください。展覧会をしましょう」と言われた時、あなたなら何を出展しますか。このことは、結局自分のこれまでの人生を降り返る作業につながります。私にとって持っていける宝物とはなにか。いろいろと考え、そして出展者はそれぞれの家で、押し入れの中深くごそごそと入っていく作業をしたのです。

展覧会の朝、端正な顔を見せ始めた展示品。レイアウトを調整し、光線を調整し、音を調整して徐々に空間に緊張感が出始めます。この美しい民家と一体となった展示品。さりげなくそして隙なく空間を切り、つないで行きます。

展示にあたって、私たちは展示のあり方自体を検討し直しました。

多くの展覧会は靴の生活を前提としてなされています。当初私たちも絵は壁に吊るすことを考えていました。けれど、家がそれをいやがりました。そこで私たちが基本としたものは、反物屋(たんものや)のスタイルでした。あるいは茶器を拝見する際の形態といっていいかもしれません。

部屋の中央部に、ゆったりと間をとって展示物を置く。そしてその横にト書きを添える。ト書きには、その物にまつわる出展者の記憶が書きこまれているのです。テキストによって語られた記憶が、出展品の放つ形や匂いや音などと響き合い、客人に伝えられていくわけです。

この写真は、スタッフが控え部屋にした掘りごたつの間から、ガラス戸越しに移した客人の姿です。実はここに置かれていたのが、今回最も多くの人に感動を与えたLightWorksさんの展示品でした。この客人は一端去ろうとして立ち上がり、去りがたく出展品をご覧になっていらっしゃるところ。降りかえった彼女の目には涙が流れていました。私たち出展者の間では、反則ワザという評さえ出た、ホッカイロのようにじんわりと伝わってくる感動的出展品です。

肝心な事を言い忘れていました。この展覧会では、出展し集う私たち側の都合に重点が置かれ企画が進められました。「はじめてのオフかい」の延長としてあったわけです。

私たちは早朝からお酒を頂き、気が向いたら控えの部屋や周り廊下で微風に吹かれながらの昼寝を楽みました。


小川亭は非常に分かりにくいところにあります。私たちは皆さん方に、住所を提示させていただきましたが、道案内は示しませんでした。地図も載せましたが、こんな地図です。さらに近くにやってきて道を聞いても、その地区にお住まいなのはほとんど小川さんです。こうして私たちは、本当に私たちにご縁をお持ちの方を待ちました。お客様は1時間に1組だろうとふんでいました。そしておいで頂いた遠来の客人を、私たちは同朋としてお迎えしようと考えていました。

実際客人はたどり着かれると、場所を訪れるに要した苦労を、ゲームのゴールに着たかのように嬉しそうに語られ、談笑をされ、会場をざっと見て展示会場の真中にしつらえた机にこられ、お茶を飲まれ、山盛りにされたキュウリの浅漬けを食され、お酒を勧められて楽しまれ、粉師じだらくさんの出展作品である手打ち蕎麦を楽しまれ、そして落ち着いて、もう一度じっくりと展示品をご覧になられました。滞在時間は平均1~2時間。ゆっくりとくつろいでいっていただきました。おいで頂いた方々に、私たちとご縁をつながれ深められていただいたわけです。

訪れた方の目に最初に飛びこんでくるのは、この光景でした。玄関を入った土間で、じだらくさんによって蕎麦打ちパフォーマンスが展開され、振舞われていたのです。

この頃になると、会場のあちこちで、何人かずつの会話が点在していました。ゆったりとした時の流れ。そこにいるだけで、満たされる場の共有。近代がないがしろにし、今私たちが取り戻そうとしている時間。商業主義の手垢にまみれぬスローライフ。私たちも気ままに過ごしました。眠りたい時に眠り、食べたいときに食べ、朋がくれば語る。それらはすべて、大きな家族に包まれた時のような安心感の中にたゆたってありました。

またそうでなければ、ここに出展されたモノに込められた記憶は開封されないものだったのです。ゆったりとしたリズムになって、畳に置かれたモノとト書きに向かい合い、ほぅと一言呟く。そんな心のありかたなしでは、この展覧会は成立し得ないものでした。

お出でいただいた方々に心からお礼申し上げます。大切な一日を私たちと費やす為に当ててくださったのですから。

そして集われた全員の皆様方とのご交友が、これからも益々深まりますことを願っております。合掌。

 

 

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