浜ん町界隈 長崎真ん中裏道
街は裏通りを歩くとおもしろい。長崎市のメインストリーム 浜の町界隈の脇通に入る。ご他聞に漏れず人間のにおいがし、いい店がある。今回はその中でもお薦めの道筋をご紹介。街もまた創造された文化の集積だ。
長崎在住者には当たり前すぎる情報とはいえ、ステルスマーケティングにまみれた情報の渦の中ではこれもまたよし。
下がそのコース。散策するにもちょうどいい。
この道筋の入るには、浜せんアーケードの浜屋デパートを過ぎたところにある文明堂 浜の町店から左折する。
これはおでんの店「はくしか」。戸を開くと店中央に番台のような指令場所がある。中におでんが温まり、オバさんも温まっている。客年齢層アベレージは60代オーバー。
ここは「bar指のつけね」のご常連の言葉を借りよう。
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散人さん
「この時節、酒飲みにはなんといっても「おでん」が恋しくなる。長崎では白鹿で一杯となる」
捨老さん
「長崎の白鹿が有名なのは、おでん屋としてではなくて、おでんの旨い居酒屋として有名なのです。池波正太郎先生も立ち寄ったそうですよ。ところが何故か清酒白鹿を飲む客は少ないのです(笑)」
オバさんからなにやかや言われるのが苦手な人は控えたがいいかもしれないとも付け加えておこう。
この周辺はかつて全国に誇る鮨の名店「とら寿し」があったことでも有名だ。ここにその全国的名店「とら寿し」についての食べログのページがある(クリック)。総合評価の星数を見れば笑ってしまう。これに関連しては『長崎おいしい歳時記』の著者 下妻みどりさんのトークを聴いてほしい。
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散人さんのコメント
裏町は一見無秩序に見えるが、完全なる無秩序(カオス)というものはなかなか存在し難いものであります、宇宙も含めて。
表通り、例えば長崎で云うと「浜の町アーケード」はある意味組織的に形成されたといえます。「この空き店舗はどうしょうか」なんて連合会などで相談され埋まっていきます。
しかるに裏町はどうもその相談事などはなくて各店が立ち並んでいます。が全くの無秩序ではありません。全国の裏町裏通りを散人は結構見てきてますが、期せずしてみな何故か似ているのであります。となると裏町のある種の構造の秩序があるのではないかと思います。無秩序(カオス)にぎりぎり接している秩序の縁(エッジ)ではないのだろうか、と。
大人たちは日々、社会であれ家庭であれ秩序の只中で生活を送っているのであります、好むと好まざるに関わらず。ではありますが多少閉塞感に陥っておりまして、たまにはこの秩序の縁(エッジ)に身を寄せたりすると安らぐのであります、癒される(嫌いな言葉ではありますが)のであります。
ここはラーメン評に定評あるラリラリピノさんのサイトから抜粋で転載してみよう。
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エイジヤ……「ここで気を付けたいのはつい「エイジヤらーめん」をオーダーしてしまわないことです。普通のラーメンの方が安くて美味しい。味はもろというか、ちゃんと久留米系。長崎市民に正統派を知らしめる一杯です」
オールウェイズ……「そのままのトンコツスープは、私の好みとはちょっと違います。ドンブリの形状が深くて、下の方に行くとスープが重くなってちょっとドロドロ、味も強くなっています。ただ、辛子味噌をちょっと加えると劇的なまでに美味しくなります」
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ラリラリピノさんのコメント
ご紹介された通りですが、文明堂のところから入ってすぐのところに有名な「離れ」や、女性に人気の隠れ家「ソムパテ」、長崎の写真家の集まる「HIKOMA」などもあって、カラフル、スリリング?いろんな表情を見せてくれますね。こんな風景がずっと残っていればこそ町は楽しい。大型郊外店、スケールメリットばかりで押すショッピングモールやチェーン店、そんなものより、身の丈に合った、路面電車での生活を基本としたコンパクトシティで十分だと思います。<
「ボルドー」。しんのじさんが師匠と仰ぐ方のビストロだ。マスターは「西洋料理調理人」長崎マイスター。店内はこじんまりとして気さくだ。トルコ風ライスは有名。
「ファミリア」。気さくなイタリアンの店だ。コースで食べるような店ではない。ワインを呑むためのイタリアン。マスターが一人で営んでいる。私の詳しいリポートはこちら(クリック)。
この界隈は先ほどまでよりも対象年齢層が下がり、そして女性に傾く。その一方、雰囲気は一層落ち着いたものとなり、コミュニティを感じさせてくれる。
古着の「五鉄」や、
陶芸の「ゆとり炉」や、コーヒーの「珈琲人町」や、
ビストロの「ピエ・ド・ポー」など。
「人情課長」という言葉がある。仕事以外でも関わりを持とうとする上司のことだ。面倒見がいいとも言えるが、1990年代まではこれが疎まれ避けられてきた。「仕事は仕事。あとは放っておいてくれ」というわけだ。ところが2000年代になって人情課長の人気は若い世代を中心に復活し始めている。そのことは下のグラフでお分かりいただけよう(出典:統計数理研究所 調査科学研究センター)。
若者層の中で湧き始めたコミュニケーションそしてコミュニティを求める潮流。ところが年齢の上がった層はその変化に鈍く気づいていない方が多い。
ししとき川界隈が近年若者を中心に静かな人気を呼び始めているのは、こうした背景があるのだろう。若者は帰れるコミュニティを求めている。大型資本に対抗して地元店舗が生き残りを求めるならば、こうしたコミュニティを引き受ける覚悟と経営形態が必要なのかもしれない。
「氣楽家」。文化人の老夫婦がやっておられる。コーヒー200円。空いていれば2階で大の字になることもできる。この近辺の同年代の店主たちは、この道筋で月見をするようなコミュ二ティがある。
下写真の右側一階は「美食空間 音」。店名どおり店主が工夫を怠らない。左側階段を上った二階には「からすみ茶屋 まつくら」。個人の住居マンションのごときドアを開けると現れる超隠れ家的店だ。
さらに進めば、路面電車マニアが集う「きっちんせいじ」(閉店)があり、さらに進めば眼鏡橋に出る。
東古川町には新しいかたちのコミュニティを芽生えさせるかのような店舗が点在する。