池島
スチームパンクな異世界へ
「未来をイメージしてください」と言われ、人の頭に浮かぶパターンは二つに大別される。一つが鉄腕アトム的未来、そしてもう一つは風の谷のナウシカ的未来だ。
長崎県・池島には後者の風景が待っている。
一つの時代が終わったあとに広がる白い世界だ。
遥か彼方から渡ってきた風が、茫漠とした風景を洗う。
建ち並ぶルイス=カーンのようなモダニズム建築。
ここに人影はない。
もはや人の世界と隔絶された通路。
閉ざされた部屋は、空虚さを増幅させていく。
子どものいない公園。
わずかな人の痕跡にさえおぼえる安堵感。
そして神の目が、静けさに沈む街をねぎらう。
住宅街を行く。
言葉を失う。
かつて島の給与は平均的雇用者の2倍。
歓楽街に溢れた人いきれは今遠い。
食事がとれる場所にたどり着く。香り立つ人のにおい。
もう一つの売店とカクウチカウンター。
1952年、この島は海底炭田掘削への道を歩み始めた。
島に新しい文明が押し寄せてきたのだ。
チューブが複雑につながれ
先端技術が結集され
うねり
ダクトは巨人の内臓のようにつながれていった。
モーターやダクトやその他もろもろの雄叫び。
声無き叫びをあげ、今も紺碧の空を背景に屹立する施設。
過去をかこつな。
消えていく存在の余塵。
このレールは地底へと向う。
はるか600メートル下の光来ぬ地下に降りて行った男たち。
地上の繁栄を支え続けた地下世界。
2001年、音は消えた。
8,000人いた住民は、今231人となった。
遥か彼方から渡ってきた風が、
灰燼を降り積もらせていく。
リリシズム溢れる光景が、蒼い海に浮かぶこの島の中にある。
行ってその目で確かめるべきだ。
その方法はこちらのサイトで(クリック)。