1998年3月
インターネットを知ってから始めたこと
インターネットを知って以来,二つのことを始めました。その一つが,詩吟を習い始めたことです。自分自身がどう思っていようとも,外から見れば私は日本人。どうであれ私たちは,日本人をしょって歩かねばならないのです。手ぶらでジャパネスクを披露できるのは,歌以外にありません。
というわけで,今日は詩吟の初の昇級試験がありました。無事一級合格。岳精流です。やれやれ,やるとクセになります。気づくと唸っているのです。
むしり取るアメリカ
クリントンは今年の年頭教書で,「アメリカ国民の勤勉さと高い目的ゆえに,今はアメリカにとってよい時代だ」と述べた後,合衆国の今年の財政赤字がゼロになるかもしれないといいました。これには失業率低下,物価上昇の鈍化,生活保護該当者数の低下という現状も踏まえられています。
けれど貿易をはじめとした海外との赤字は,90年代に入って拡大の一途を辿っています。これがアメリカの経済を支えているのです。日本銀行は単独で、近年なんと35%に当たる金額をアメリカに資金援助しているのです。
アメリカンライフは目指すべき生活スタイルではない
世界中には約190の国があります。アメリカは1国で,世界の1/4の経済活動をし,1/4のエネルギーを使っています。
ですから世界を考えていくとき,アメリカの動向はよくみつめなければなりません。
世界に59億人の人々がすんでいますが,アメリカの2.6億人で世界の1/4を使っているのです。これがアメリカンライフです。このような実状の上にアメリカの様々なシステムや思想が築き上げられているのです。ですから「アメリカでは常識よ」と言ったとき,それは世界の常識ではないのです。このことは簡単なことですが,よく専門家も間違えて語っています。アメリカがこのような傾向だから,日本もそうすべきであるなんていうのは,その典型ですね。しかし確かにアメリカは我々にとって現在様々な意味で,かけがえのないパートナーで考慮しなければならぬことも多々ありますが。
長い意味で「持続可能性(sustainability)」を考えれば,アメリカンライフは目指すべき生活スタイルでないことも理解できます。放蕩三昧の生活を世界中の人々が目指せば,地球的規模で環境エネルギーはクラッシュしてしまいます。しかし,中国が近年このライフスタイルの方向を目指し始めました。12億人が立ち上がろうとしています。けれど私たちが,このような他国を批判することはできません。
金がアジアからアメリカに移動した
アメリカ経済のもう一つの不安材料として,海外依存度の高まりがあります。1995年以来,海外から大量のお金がアメリカにはいっています。これに最近のアジア経済の危機をリンクさせて考えると,世界経済は実に分かりやすい。いつでも基礎は簡単なことです。お金が,アジアからアメリカに移動したのです。その子細については,また後日。
なにを言っとるのだクリントン
(略)アメリカ国民の勤勉さと高い目的のゆえに、今はアメリカにとってよい時代です。われわれは1400万以上の新しい職場をもっています。 24年間で最低の失業率であり、30年間で最低の物価上昇であります。収入は上がっており、われわれは歴史において最高の自家所有を持っています。犯罪の記録は5年連続して下がりました。そして生活保護該当者名簿は、27年間で最低の水準にあります。世界におけるわれわれの指導力は、敵するものがありません。紳士淑女のみなさん、われわれの合衆国は強いのです。(中略) 30年間に6人の大統領があなた方の前に来て、赤字がわれらの国民にあたえる損害について警告してきました。今夜わたしはあなたがたの前に来て、合衆国の赤字が----かつてはそれが捉えられぬほど大きくて11のゼロをもつほどだったのが----ただのゼロとなるだろうとお知らせします。わたしは1999年のための議会に、30年間で最初の収支の均衡のとれた予算案を提出するでしょう。そしてもしわれわれが財政的規律をしっかりと固守するならば、予定に4年先んじて、今年予算の均衡をとるかもしれません。(略)
日本が支え続けるアメリカ経済
日本銀行は単独で、1993年には米国の財政赤字の11%、1994年には14%、そして昨年はなんと35%に当たる金額を米国に資金援助した。一国の政府が他国の国民貯蓄にこれだけ依存するのは、1690年代から1700年代初期にイギリスがオランダへ依存して以来初めてのことである。
米国が1971年8月に米ドルの金への兌換を 取りやめ、世界に米財務省証券本位制を押しつけた結果、このような事態になると誰が予想しただろうか。日本 は余剰のドルを金ではなく、米国の国債である財務省証券に投資していた。金を購入しないのであれば、外国政府の約束手形、つまり米国なら財務省証券を購入するしかなかったのである。「米ドル」の形で外貨準備を保有するということは、米国財務省証券で保有することであり、すなわちそれは、米国財務省への融資を意味した。米国は海外からの通貨の流入を利用しながら、外国に有無を言わせず自国の軍事、政治、経済の目標達成を目指している。
この夏、橋本首相が米コロンビア大学の講演でつい口を滑らした「米国債売却発言」である。質問したのはヘッジファンドのファンドマネジャーだ。「日本が外貨準備でため込んでいる米国債の価値がドル安・円高で目減りしていることをどう考えるか」首相は次のように答えた。「米国債を大量売却したい誘惑に駆られたことは何度かある。例えば、ミッキー・カンター(元米通商代表)と自動車でやりあったときや、米国が国内にのみ目を奪われ、基軸通貨としてのドルの価値に関心がなくなったときだ」橋本発言でその日のニューヨーク証券取引所の株価は一九二ドル安と急落した。ワシントン・ポスト紙は「ハシモトの爆弾」と社説で書いた。
ビーパルは自己分裂している
『植村直巳と山で1泊』という本を読みました。以外だったのは極地で使用していた鍋が一般の家庭用のアルマイト製であったことに代表されます。不器用でセルフエスティームのためにも探検をしていたのではないかと考えると,痛々しいですね。
それにしてもこの本を出版しているビーパル編集部は,自己分裂しているところで問題ありだとおもいます。自然保護を訴えながら,カンガルーバンパーを装着した車の広告を出す。そんなパラドクスに赤面しないのです。