1998年5月
40過ぎての放浪生活は
海岸で夕日を眺めていると,軽自動車に寝ころぶ40代の男性から声をかけられました。ヨロン島から放浪していると言います。
正直に書きますが,30歳までの男が放浪生活をしていると一種のロマンを感じてました。しかし,このことを書くには抵抗があるのですが,40過ぎてからの男性が明日をも知れぬ生活をしているというのは,なんといいましょうか,「おい,ちったあ世の中に貢献しようよ」と思ってしまったのです。40にもなって自分のことで手一杯というのは,いかがなものかと。
そう考えますと,今もてはやされている山頭火も,どうでしょうかね。閉塞感のある現代社会が,彼をして一種のヒーローにしてますが,離れて眺めてよしとされる人ではなかったんでしょうかね。
チャイナ・ネットワーク
チャイナ・ネットワークやインディア・ネットワーク。世界地図を眺めるとき,こんなネットワークを頭に入れて見ていないと,世界の動きは理解できないと思います。最近報じられる世界的動きには,実にポリティカルな詰め将棋を感じます。
世界の動き
この頃気になっていることを列挙してみましょう。もしかしたら,現代世界の真相が見えるかもしれません。
●ジョージ・ソロスという大金持ちがいます。彼は世界を股に掛けて投資をしています。彼がどのくらいのお金を動かせるかと言いますと,1992年にイギリスのイングランド銀行(日本の日本銀行のようなもの)とやりあって勝つほどです。想像を絶しますね。彼はアメリカのアドバイザーのような仕事もしてました,たしか。
●このように各国の通貨を売ったり買ったりして,お金をもうけようとする人たちがいます。まるで博打です。ものすごく多くのお金を売り買いするので,ときどき国の経済が困ってしまうほどです。
●さて,アメリカなどはアジアに,経済の開放をせよ,と要求してきました。
●そこで東南アジアのタイやマレーシアなどは,変動為替相場制度に昨年踏み切りました。つまり毎日毎時間毎秒,「1ドル=自国通貨」(これをレートといいます)が変わる制度にです。
●その後,これらの国々は経済崩壊しました。
●マレーシアのマハティール首相はカンカンです。「ソロスなどが,東南アジアのお金を売り買いした。だから東南アジアは経済崩壊したんだ」と怒っているのです。
●経済崩壊した国はIMFから借金をしました。
●IMFというのは,国相手のサラ金会社のようなものです。
●IMFから多くの借金をすると,このIMFというサラ金会社のいうことを守らねばなりません。会社で言えば,銀行管理になってしまうようなものです。
●IMFではお金をだした国ほど発言権があるのです。ですからIMFで最も発言力があるのはアメリカです。
●1998年5月現在,マレーシアで内乱が起こっていますが,これはIMFの管理下に置かれたインドネシア政府が,公共料金などを上げたのも一原因です。韓国の経済混乱もご存じですね。
●日本も今年4月,アメリカの経済解放の要求に従ってビッグバンをしました。
●各国を一年間の予算順に並べる。それからそこに,多国籍企業を年間収益順に並べる。するとあなたはびっくりするかもしれません。
●バーミンガム・サミットの宣言文を読みましたか?これは「国」の代表者が決めたものかと,目を疑いました。あれは民主主義を守る仕事の人たちが書いたのでしょうか。
●「さあ,バンバン経済の自由化をして,強いものが勝つようにしよう」とあの宣言の3分の2のスペースを使って書いてありました。
●民主主義の基本は,自由と平等です。自由だけではヘンなのです。こんなことは小学生でも知っています。
さあこれからどうなるでしょう?
説教強盗アメリカ
インドが核実験をして以来,アメリカが批判を繰り返しています。この頃,こうした説教強盗のごとき輩が多くなってきているようです。インドを庇う気はありませんが。
異常気象
「いやあこの頃は,暖かくなるのが早いね」ですとか「今年は雨が多いね」とかよく聞きます。この「この頃」や「今年」という言葉を聞いたとき,私たちはもっと大きなスパンで頭の中にグラフを描くべきなのでしょう。現在文明を変容させていく要因として,この異常気象を認識しておかねばなりません。
私は11月生まれです。「あなたが生まれたとき雪が降っていた」と母はよく話します。私が在住する地域では,近年の11月では紅葉がまだ続いています。
世界的に雨が降っていた所に降らず,降ってなかった所に降る。それだけで,植生は変わり,農業分布は変わり,流通体系が変わり,経済が変わり,ライフスタイルが変わります。今年オーストラリアの珊瑚礁が白くなり死滅し始めたとメディアは伝えています。
5才になる娘の話
彼女は幼稚園に通っています。最近チャットに凝っているんです。父親がインターネットを使っているのをみて,自然に覚えてしまったのですね。今では,父親とテレビのチャンネル争いのように,コンピュータ争いをしています。
自分のホームページ
自分でコンピュータのスイッチを入れ,マウスを使ってソフトを立ち上げ,自分の使うホームページに訪ねる。そこはキティちゃんのホームページ(マグネティック・フィールド)でして,自分の家が登録されている画面上に,自分がデザインしたお家がでてくるんですね。その家の前にポストがあって,お友達からイーメイルが来ていると,お手紙が出たり入ったりしているんです。先日はポルトガルの女の子,その子のお父さんが日本人なのですが,その子からイーメイルをもらって喜んでいました。これに自分でキーボードを打ってお返事を書くのです。
字を書く前にキーボード
実は,彼女はまだきちんと字を書けません。でもキーボード上の「ひらがな」なら読めるので,キーボードを打てるというわけです。打ったテキストに「ぬり絵,つけよっと」といって添付ファイルをつけて送信しています。それが終わって,チャットに行く。これがこの頃の日課の一部。様子を見ていますと,なんといいますか,少し頭が混乱します。こんな時代になったんだと思います。そしてこれから,どんな時代になるだろうと思います。ひらがなを書くよりも,インターネットでイーメイルを打つ方が簡単。それはそうだけれど,と思います。この事実は,ちょっと衝撃を受けます。
そんな時代を迎えようとしているときだからこそ,不易と流行ということを確認しておかねばならないと思います。時代を超えて変わらない側面と,時代に対応していく側面。これをきちんと理解し,対応しておくこと。よく「すべてが新しい時代となった」などという表現を見かけますが,こういう表現は十分注意すべきですね。