伊勢神宮に詣でる
早朝参拝
4時起床。外はまだ暗い。一人身支度を整え、宿の玄関先でコーヒーをいただく。
五十鈴川を越えおかげ横丁に移ろうとすると、角に店を構える赤福にはすでに灯が灯っていた。
内宮正面の鳥居に至る。4時55分、すでに4人ほどの人影。
5時、銀河鉄道999に似た制服の警備員が入り口を開く。
鳥居の下深々と頭を垂れ、五十鈴川にかかる宇治橋を聖域へと進む。目覚めた鳥たちのさえずりが聞こえる。
緩やかなカーブに誘われ人知を超えたかわたれ時の世界へと吸い込まれていく。聖なる領域だ。域内は細かいことに物言わず、堂々と構え懐を広げる。気づくと私のような俗人の瞳にも不思議な涙が滲んでいた。訪れて本当によかった。
御正宮に至る。30年ぶりのことだった。
帰路、参拝に上がる家人と出会う。
ガイドさん案内参拝
外宮
同日8時半から、ガイドさんに外宮と内宮をご案内いただいた。
神宮内は説明板が極力避けられている。なぜならこの地は観光地ではなく、聖地だからだ。そのためガイドさんの案内なしでは理解できないことが多い。訪ねる際はガイドをお願いされることをお勧めします。
豊受大神宮
外宮の御正宮であり、天照大御神のお食事を司る神。
写真は次回の式年遷宮で御正宮が移される御敷地だ。左奥に現在の豊受大神宮が見える。広く知られているように20年に1度お引越しをなさる。
私たち夫婦をボランティアガイドしていただいた坂野さんはしっかりとした知識を身につけてらっしゃるだけでなく、こちらの状態を配慮し巧みに解説をされる聡明な方だった。
これがほぼ無料とは。現世で徳を積まれている方だ。頭が下がる。
別宮 土宮
地主の神が祀られている。
別宮 風宮
風雨を司る神々が祀られている。別宮も式年遷宮がなされ写真手前が次の用地である。
別宮 多賀宮は、私の疲れをみとったガイドさんに拝みどころへと案内していただきお参りさせていただいた。
以上、多賀宮・土宮・風宮が正宮の次に格の高い別宮とされている。
この他にも忌⽕屋殿、祓所など様々にご案内いただいた。
タクシーに乗り込み、内宮へと向かう。
内宮
神秘的な体験をした。
内宮前に着き、私たちがタクシーから降り立った。と同時に、それまで半日曇天であった空から陽が差した。内宮は太陽神である天照大御神。「神さまに歓迎されてますね」とガイドさん。
早朝参拝に重ね再び五十鈴川を渡る。桜が見事だった。
幅広くとられた参道に石を敷いた線が描かれている。かつてはこの線より内側が参道で、外側は家屋が建ち並んでいたという。明治期の国道1号線はこの道、つまり東京から伊勢までのルートであった。
五十鈴川の御手洗場を経て、天照大御神へのお取次ぎを果たされる瀧祭神にお参りする。
早朝参拝でお参りした内宮の正宮の写真を、何度も掲載するのは憚られる。私は世界平和を祈った。上写真で左奥にわずかに望めるのがその正宮だ。写真は式年遷宮のための御敷地。
別宮 荒祭宮
天照大御神の荒御魂をお祀りする内宮第一の別宮。荒御魂とは神様の荒々しく格別に顕著な神威をあらわす魂の働きを指す。
12時を過ぎた頃、私の疲れた様子をみとった家人とガイドさんによって案内を締めてくださることとなった。合掌。早朝参拝は「感」に、ガイドさんにご説明いただいた参拝は「知」に染み入るものだった。
本日の歩行距離:11.9km。
ファーストコンタクト
時を戻そう。
フェリーで一泊し、伊勢には五十鈴川駅で降りた。清楚な駅だ。桜花が咲いていた。私たちは心地よく散策を始めた。
地図をご覧いただけばお分かりのとおり、今回の私たちのプランは神宮に早朝参拝することを念頭に置いていた。神宮に最も近い宿をとり、初日は駅から順次ゆかりの深い神社にお参りした。
⽉読宮
参道に入ると国道からがらりと気が変わり、鬱蒼とした樹々が天に伸び聖域に来たことを感じ入る。伊勢のファーストコンタクトは⽉読宮から始まった。
⽉読宮 皇大神宮(内宮)別宮
⽉読宮は天照大御神の弟であり、月の神だ。
写真右から月読荒御魂宮、月読宮、伊佐奈岐宮、伊佐奈弥宮の四別宮が並んで鎮座されてる。
なお伊佐奈岐宮は天照大御神の父イザナギが、伊佐奈弥宮には天照大御神の母イザナミが祀られている。
猿田彦神社
みちひらきの大神。瓊杵尊を高千穂へと導いた神。学業や仕事をいい方向へと導くとされる。
境内社に佐瑠女神社があり、天照大御神が天岩窟に引きこもり世界が暗闇となった際に舞った神が祀られる。天照大御神はこれによって岩窟から姿を表し、世界に光が再び満ちたとされる。そのため芸能人からの信仰が篤く、南海キャンディーズのしずちゃんやEXILEなど芸能人の奉納のぼり旗が立ち並んでいた。
おかげ横丁・おはらい町
徒歩で二つのお社を巡ったあと「いにしえの宿 伊久」に荷物を預け、おかげ横丁・おはらい町に出かけた。
伊勢詣の年間参拝者数は、江戸時代に多いときには年間400万人以上、2024年は754万人と推計されている。古今全国から多くの参拝者が訪れ、神社への参拝はもちろん、飲食やかつては様々な遊興で賑わっていた。
有名な「伊勢うどん」はゆるゆるのうどんだが、ルーツが来店した客に迅速に提供するため、釜にうどんをあらかじめ浸けていたことによると聞いた。それほど参拝者が多かったことを物語るエピソードだ。
本日の歩行距離:9.6km。
2025.04.09