ベネッセアートサイト直島

フェリーから演出は始まっていた

フェリーは滑るように進む。研ぎ澄まされた美的空間はもうフェリー船内から始まっていた。徐々に近まる直島。これがアートへといざなう仕掛けか。いやがうえにも旅への期待が高まる。
草間彌生の赤カボチャが見えてきた。

SANAA建築 海の駅「なおしま」

出迎えた海の駅「なおしま」。建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞受賞SANAAによる実にリリカルな建物。彼らの作品は金沢21世紀美術館でも知られる。管理者のズタボロな感性で屋内は無残な態。

ベネッセアートサイト直島に到着

海の駅「なおしま」まで迎えに来てくれるベネッセ専用バスで敷地内へ。今回の旅のメイン「地中美術館」に直行する。ここを設計したのはご存じ安藤忠雄。プリツカー賞受賞。ベネッセアートサイト直島は彼によるコーディネイトだ。

ベネッセの美術館内は撮影禁止。写真は後半に大量にありますので、しばらくお付き合いをお願いします。

地中美術館

入館者は安藤忠雄の引いた陰影のグラデーション空間に導かれ、アーティストの作品にたどり着く。観るを超え、体感させる美術館。今日現在はネットによる完全予約制。入場者数を厳密に制限している理由がわかる。静謐さに満ちた館内。この建築は幼児や単なる観光客を呼んではいない。


ジェームズ・タレル「オープン・フィールド」

「光の海に入っていくようですね」と家人は言った。今回の旅で最も衝撃を受けた作品だ。「こりゃあ、写真撮影を禁じている意味がわかるね」。写真では絶対に伝わらない。鑑賞者は前の間で、プロジェクター投影による彼の作品に接してここに来る。同じ手法と思い徐々に近づいていくと、ある地点で光に満ちた実際奥行きのある空間へワープする体験を味わう。そう、クッと異次元に突入する。自身が魂そのものとなって、脈動する光の中に浮遊する。
夫婦二人だけでの鑑賞だった。部屋の前で並んで待つのだが、私たちの後ろが8人集団だったため区切ってくれたのだろう。
次の間が、同じくタレルの天井を四角く切り取った巨大なピクチャーウインドゥ「オープン・スカイ」。周囲に座して背もたれにもたれるとわずかに暖房が施されていた。空を見上げ瞑想的時間と雲が流れる。


モネ 水蓮の間

これほど上質なラッピングをされたモネの作品を私は他に知らない。ついに御浄土に招かれたかのような極上の美しさだ。大原美術館のモネの睡蓮との展示格差を思う。


ウォルター・デ・マリア 「タイム/タイムレス/ノー・タイム」

「これはラスボスの部屋ですね」と家人は言った。ヒトの世界を超えた空間。


地中カフェ

瀬戸内海を眺めながら地中カフェで昼食。やっと施設内で撮影が許されるポイント。ゆっくり休んだ後、安藤の引いた線に導かれる楽しさをもう一度満喫して、地中海美術館を後にした。地中美術館はゆったりまわって食事して所要時間は2時間。

李禹煥(リ・ウーファン)美術館

地中美術館から李禹煥美術館まで徒歩で9分、500mを移動。
現在日本を足場に世界で活躍する作家だ。パトロンのついたアーティストの幸福を思う。いいなあ。「出会いの間」の煩雑さはどうにかならないものか。所要時間30分。

 

屋外展示を巡る

ベネッセアートサイトは広い。そして屋外には立体作品が点在する。私たちは李禹煥美術館からホテルまで散策しながら帰った。

草間彌生「南瓜」

片瀬和夫「茶のめ」

蔡國強「文化大混浴 直島のためのプロジェクト」

ダン・グラハム「平面によって2分割された円筒」

ジョージ・リッキー「三枚の正方形」

ウォルター・デ・マリア「見えて/見えず 知って/知れず」

大竹伸朗「シップヤード・ワークス 切断された船首」

大竹伸朗「シップヤード・ワークス 船尾と穴」

杉本博司「タイム・エクスポーズド ノルウェー海 ベステローデン諸島」

ニキ・ド・サンファール「腰掛」

桟橋。海はどこまでも青かった。瀬戸内をヨットでクルージングさせていただいたことを思いだす。

 

ベネッセハウス パーク

直島は「世界で訪れるべき7つの場所」に選出され普段は混む

まさか自分の人生で泊まれる日が来るとは思っていなかった。第一に部屋が取れない。直島が世界的な旅行雑誌「Conde Nast Traveler」で2000年「世界で訪れるべき7つの場所」に選ばれたことが影響している。今期はコロナ禍もあって海外からの入国ができず透き目が生じたのだろう。第二に宿泊価格が今回なんと1室2人分で25,000円程度。Go to トラベルの賜物だ。

やっと安藤忠雄建築の画像をお見せできる。ここから室内撮影OKだ。

安藤忠雄建築のベネッセハウス パーク内部へ

ホテル玄関ではからまるツタが紅葉をはじめていた。入口は高さ4m程の一枚ガラス自動ドア。人が近づくと原始的な音を立てて開く。

ホテルには作品が点在していて、深夜も巡ることができる。

フロント近く。左の窓は凄まじく職人泣かせの横広スリット。地中美術館にはこんなスリットの化け物級が切られているので楽しみに出かけてください。
奥には「寝ねえ子 どごだ」的立体。「お子さんは怖がられましてね」と案内していただいたお嬢さん。アントニー・ゴームリー「サブリメイトⅣ」。

地下階の展示スペース。杉本博司の作品が多い。

陰影グラデのたっぷりとした空間に置かれた作品。

安藤忠雄的トイレ。

幅広の階段を降りたガラス面の向こうにラウンジがある。サインのストイックさによるうつくしさと相反する伝わりづらさ。

ラウンジではコーヒーや紅茶などをセルフサービスで楽しめ、ゆったりとくつろげる。コーヒーは確かにおいしかった。酒類は有料となり深夜まで開いている。窓の外にはジョージ・リッキーの動く立体作品「ペリスタイルⅤ」。

宿泊した部屋

デラックスツイン。選び抜かれた線による空間の切り方。ここは安藤建築には珍しく木造だ。室内に掛けられたエッチングはタレスの「ファースト・ライト 1989-90、Decker」。

水回り。シンプルで自ずと整理へといざなうアフォーダンスが込められた空間。

窓の外には小川とその向こうに広がる緑の芝生、そして瀬戸内海。芝生には屋外作品が点在し、洗練されたテラスレストランやショップも続いている。

コップから歯ブラシから、設えられたアイテムに隙はない。

部屋を出た廊下。こうまでシンメトリーが多いとキュブリック作品を連想させる。「シャイニング」というより「2001年宇宙の旅」だな。

 

宮之浦エリアへ足を伸ばす

夕方、宮浦港近辺に巡回バスで足を伸ばした。

草間彌生「赤かぼちゃ」

大竹伸朗 直島銭湯「l♥湯」。内部もデコラティブ。入浴を楽しみ、地元の方との会話を楽しんだ。「コロナでね、ウイークデーは飲み屋も閉まってるところが多なって」

藤本壮介「直島パヴィリオン」。この作品を観るなら夜に限る。

海の駅「なおしま」内部。悪いことは言わない。誰かデザインが分かる人を入れなさい。せっかくのSANAA建築が台無しです。と言いつつ、こうして写真で見ると現代アートにも思えてくる不思議。

その夜はほとんど眠れなかった。アートに酔い興奮したか。飽きず眺めていた対岸の灯。高松かな。

 

ベネッセハウス ミュージアム  そして旅のヒント

一夜明けて早朝から屋外のアート巡り。明けていく空のもとのオブジェも味わい深い。フィールド内を散歩して楽しむ人々にしばしば出会った。「おはようございます」 「おはようございます」。ラッシュ時には見ることのない表情で見知らぬ者同士があいさつを交わす。豊かなひと時。

ベネッセハウス ミュージアム

ベネッセハウス ミュージアムは小高い丘の上にある。8時25分に巡回バスを利用して向かった。ここはベネッセアートサイト直島の発祥の地だが、安藤が大ナタを振るった地中美術館を体感した後ではすべてが小ぶりに見えた。そう、今回の直島旅では圧倒的に地中美術館が私たちの心に刺さった。

1日目に訪れた大原美術館は繊維産業、2日目のベネッセアートサイト直島は教育産業、それぞれの時代を象徴する資本の蓄積による美術館だ。時代の移ろいを実感する。

ベネッセハウス ミュージアムは1時間半ほどの所要時間だった。徒歩でホテルに帰り、10時45分の巡回バスに乗車後は、脱兎のごとく長崎への帰路についた。

直島旅を体験してのヒント

体験して分かった直島の楽しみ方をメモしておきます。お役に立てれば幸い。公的な観光サイトなどでは分かりにくいことがいろいろとあります。

  • 欲張らない。何泊もするなら話は別ですが、私たちは直島を1泊2日で楽しむために、他の2島を巡ることも、家プロジェクトさえも、プランから割愛しました。手にしたものは、ベネッセアートサイト直島を徒歩の速度でゆったりと楽しむ時間。

  • 歩く服装をしていく。私たちは直島滞在時は10キロぐらい歩いていました。荷物は絞りに絞って。手荷物はリュックへ。

  • 9:22の宇野港発のフェリーに乗船すると、9:42に直島の宮ノ浦港に着きます。ここからベネッセ宿泊者専用バスに乗って地中美術館へ直行。予約チケットが取れる最初のチームとして入館できます。

  • 巡回バスは、町営バスとベネッセハウス宿泊ゲスト専用バスがあります。ベネッセ宿泊者専用バスは無料で、バス停は海の駅「なおしま」の町営バス用の後方に待っているとBenesseと書かれたバスがきます。運転手に荷物を預ければ、ホテルの部屋まで届けてくれるサービスがあるので、身軽に地中博物館を楽しめます。町営バス利用者が地中博物館に行く場合は、つつじ荘前のバス停で降りたらベネッセハウス場内無料シャトルバスを利用します。
  • ベネッセホテル宿泊者がネット上でブツブツ言っているのは食事について。ベネッセ内では夕食10,000円程度、朝食2,700円程度。コンビニ的施設もありません。外でとるならば二つの方法があります。一つ目が隣接する宿泊施設「つつじ荘」でとる(徒歩8分)。夕食も朝食もそこそこの値段で宿泊しなくてもとれます。要予約。二つ目が、宮ノ浦港周辺か本村地区に出て食事をする。主観ですが家プロジェクトがある本村地区の方がおいしい店が多いように感じます。開いているか電話で確認すること。帰路は本村地区の場合、町営バスを利用することになります。「つつじ荘」あたりにバスは着きます。朝食は宇野港前にあるコンビニで用意しておくといいでしょう。
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    倉敷美観地区

    実は直島に渡る前、倉敷美観地区を散策しました。

    倉敷美観地区には倉敷駅から徒歩で12分。大原美術館はこの中に囲まれている。
    ずいぶん以前に訪れてはいた。これほど圧倒的にうつくしい街づくりが広げられていたとは。

    立ち並ぶ古民家は優れたデザインセンスでリニューアルされ、洒落たカフェやショップとして息づいている。すばらしい。観光街づくりがしばしば仕出かす失敗は、歴史的建物を観光休憩所として生き殺しにしてしまうことにある。

    繊維産業で栄えた商家の白壁と洋風建築とそよぐ街路樹。そして中央を流れる倉敷川。歴史的素材と地形の見事な響き合い。高度な街づくりの技術に感動する。

    郷土料理「浜吉」

    「気が向いた店に飛び込んでごらん。食事をしよう」

    選んだのは蔵のような店構えの郷土料理「浜吉」。


    店内は太い梁とジャズ。窓を通して中庭の緑があった。ママカリを食しながらビールを頂く。そしてホロ酔いで街を巡る。

    大原美術館

    レトロさは否めないものの、美術史に足跡を残す壮々たる作品群。
    セザンヌの現物に接すると感覚の新しさに改めて驚く。

    大原本邸

    大原美術館を創設した大原家の豪邸は、川を挟んだ壁の中にあった。2年半前に開館。それまでは当主が住まわれていたという。街並みの風景に溶け込んでいるためか、気づく人も少なく入館者はまばら。丁重な対応をいただく。

    サカナクションのPVのように凝ったインスタレーションと、重厚な佇まいに圧倒される。写真に写る文字は、実際に室内につるされてレイアウトされている。

    苔庭の渋さも見事。絶対のオススメです。


    2020.11.04-11.06

     


     

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